『 無限グラヴィティ』副題:住吉山さんへ 「演劇クエスト」で無限グラヴィティに陥りました。
これはorangcosongさんの『演劇クエスト 高槻ノ無限回廊』を自己流でめぐった記録です。
〈演劇クエスト〉
https://orangcosong.com/jp/project/engeki-quest/
〈高槻芸術時間インタールード〉
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17:55
阪急、高槻市駅に着く。京都の河原町から来ると大阪の匂いが少しする。そんな気がする。
改札を出る時に、おじさんがアンパンマンのように右手を上げたので何かの歓迎かと思ったら、私の後ろにいた女性の出迎えだった。
朝、演劇クエストの冒険の書という本を少し読んで新、旧どちらかの劇場に行くのが分かった。昨日高槻インタールードの別の展覧会、梅田哲也さんの「9月0才」で旧劇場内をめぐっていた時に、新劇場の一部が見えた。完成は2023 年3月予定で、現在は2022 年の9 月。
演劇クエストの会期は19 時までだが、日没前に終えないといけないようだ。
18:03
劇場横の野見神社が見えてきた。劇場のロビーに行って挨拶するのはやめよう。きっと親切心でヒントを貰ったら、それに従ってしまう。
本を開く。周りで本を持っている人がいないので、乗り遅れた気分になる。
ロビーに行き、大階段を下りたという体で、劇場で懐古するのを後回しにする。
18:10
神社は好きなので入ってみたものの、水筒で何か飲んでいる人がゲェーッと言っている。社が幾つかあり、お稲荷さんもいらっしゃる。
境内には高槻戎神社や永井神社もある。
青年がほろ酔いなのか「お姉さん、なんかある?」と来る人来る人に訊いていて、私も訊かれ「なんもないよ。おまいりする?」と伝えて一緒に詣ったので、気もそぞろになる。
栞代わりに挟んでいた指も本から抜けて、完全なるロスタイムだ。蚊に刺される。
牛頭天王を祀る神社と書いてあり、聞いたことある神様だと思ったら八坂神社の御祭神だった。厄災を除いてくれる神様として信仰され、様々な神に由来を持つそうだ。
18:21
次の指示にある交番をグーグルマップで探す。犬と目が合う。さぞかし不安な目をした人間に見えただろう。
18:27
さっき同じように話しかけられていた本を持った人が行った方向に交番はある。が、「公園が近い交番」はないので来た道を戻っている内に充電が切れ、ほんとに迷う。ゲームオーバーか。
新劇場が見え、思ったより工事が進んでいた。
歩道橋はどこなのか。
信号が青なので渡ろうとしたら、間違ってタクシーが進んできて危うかった。
18:33
携帯を充電しながら、ただただネーミングが惹かれる城公園に向う。日没して、もうよく分からないのでゲーム外だが、どこかの段落にこの公園が出てくると期待している。
18:37
公園という文字を見つけたが、指示に次の指示の番号がなく「公園に面したマンションの建物に記された番号のパラグラフに進むこと」とある。
ポメラニアンと目が合い、吠えられる。飼い主が「あかんでー」と言って綱を引っ張っているのに、まだ吠えている。
マンションを探すことを半ば諦めかけているが、公園灯がある為まだ本が読める。
18:43
巨大なタコの遊具が見える。同じ段落の中に、「タコに近付き、左手上空のほうを眺め、公園に面したマンションの建物・・・」と書いてあった。
あれはマンションなのか、学校なのか。
学校っぽいけど、マンションか。
タコはご陽気な顔である。
18:49
こんな私にピッタリの文字を見つける。
「オーケー。そしたらまずは、この公園に流れる時間に身を委ねてみることにしよう」
18:55
ミラクルが起こり、プロローグ・後編 チクタク道の段落に繋がっている。
そこにある3つの選択肢の内、残念ながら「タコの背後の方向に伸びている道」しか分からない。
街のネオンのように光る首輪をつけた犬二匹に、匂いを嗅がれる。
19:01
先程と違う神社に誘導され、入るか入らないか迫られるが、暗闇の神社は怖い。小心者だ。
19:13
神社の左の道を進んだが、書いてある「趣のある酒蔵」が見当たらない。酒で検索し、カタカナ表記の建物が気になりクリックしてしまう。ポルトガル語ではじめましてという意味らしい。二股道に惑わされる。仕方がないので、親子連れの後をついて行く。高槻城東大手門跡の看板の下に、市立しろあと歴史館の案内がある。
巨大なネズミが二匹前を横切ったが、デカい。新宿で見たネズミと同じくらいかもしれない。
さっきの公園での三択に歴史館があったはずと探すと、歴史民俗資料館だった。
ラブラドールレトリーバーの吐息が聞こえ、過ぎていった。
19:19
歴史民俗資料館からの指示の続きを幾つか読む。「角に写真館のある交差点」と出てきたので、写真館を検索する。
19:23
写真館が多すぎやしないかと思い、同じ段落のコンビニも検索するが、コンビニを検索した私が愚かだった。キレイな老人ホームの上空にある星を見て「綺麗」と呟いてしまった私の手を、また蚊が刺した。駅があるだろう方向に歩く。
19:28
柴犬と目が合う。これはゲームなのだから、自由に時間を設定して終わっていいはずだ。ファミコンしかやったことがない私が唯一出来るのは、時間と目標設定とジャンプだ。
友達からのメッセージにひとまず返信する。明日劇場の横のスタバで会おうと書いてあったので、オッケーする。
JR高槻駅に20 時とゲーム設定をした。達成出来ればジャンプだ。
19:36
道に石がわざわざ置いてある。せめて面白写真くらいは撮って帰りたい気持ちになっている。月に一回は来ている高槻で、道に迷う新鮮さ。
上半身裸のお兄さんが、多分彼の家の前でスマホを触っている。弾ける解放感!と思っている場合じゃない。
19:45
何しに来たのかも数分忘れていた。本を読むんだった。駐車場に白いポールが数本固まっていて、ニョロニョロに見える。本に出てくるかもと思ったが、出てくるわけがない。
19:51
公園だと思ったら、京口町ポケットパークと書いてある。小さいとポケットなのか。向かいのマンションに「いててや」と書いてある。私のようなイタい人達が集まる店なのかと思い検索したら、ジャズが流れる定食屋さんらしく美味しそうだ。
救急車のサイレンが聞こえる。私の横で徐ろにおじさんが自転車に空気を入れ始める。
私にもガソリンを入れてもらいたいところだ。
19:58
阪急高槻市駅の標識が見える。目的の駅と違うが良しとする。クライマックスとして歩道橋に上り写真を撮る。
住吉山さんに嫌われるかもしれないが、「やったぜクエスト」と送りたい。すぐゲームオーバーになり、後は血迷ってましたと言いづらいけど。
20:02
まだ駅ではない。何か食べて帰りたいと思って目に入った店には、こんにゃくしかない。こんにゃくのぴり辛ステーキも、こんにゃくの唐揚げも美味しそうだが、私の失われた体力の回復はしてくれなそうだ。
20:43
結局モスバーガーに入り、本を読み切る。ポケットパークの文字はなかった。仇討ちの辻に行ったり、電話ボックスから電話をかけたり、バスにも乗ったり、楽しそうだ。
段落十九に「迷子じゃありません、冒険者です」とあるが、私は迷子だった。ヤケクソで本に書いてある携帯番号に電話したら、留守電になりそうで切った。
20:53
最後の文から本編 時ノ無限回廊の段落に行き、JR高槻駅からの道を心で駆け巡って、途中で終わった。
「目の前に見えるものだけに囚われないように。心のグラヴィティで感じてほしい。」と書いてある箇所だ。
心のグラヴィティって何だ!?
その前に書かれてる「わんぱく動物ランド」行きのバス系統番号と同じパラグラフに進めないと一生わからないに違いない。閉店時間だ。
21:00
無限回廊高槻を出る切符をやっと手にする。かれこれ3時間もいたのは、磁場の強さのせいなのか。
8時間労働を終え、本を見せながら演劇クエスト行ってくるわとだいぶ年下の仕事仲間に告げたら、「元気ですね〜」と言われた。その時はプロローグ・前編の30 分の予定でいた。
冒険者達の集いという参加者達で語り合う会が、公園で行われていたとSNSで知る。気付かず彷徨っていた姿をどうか見られていませんように!
今度磁場が弱い場所で開催されるなら、昼間に気心がしれた人とカジュアルな冒険をしたい。